それから何日もたった。

やはり所々での戦闘は続き、それは村の近隣へ集中していた。

一方のアルダン達竜人は、毎日同時に上空から見て周っていたが、特に異変は無く、Aブロックでの戦闘報告も入ってこなかった。

「何なんだかなぁ・・・。」

見回りを終え、地面に降り立ったアルダン。ほぼ同時にシンも降り立った。

「何か別にどうってこともないよな。ヤバい戦闘が起こるわけでもナシ」

「そうなんだよなー・・・まぁいいっちゃいいんけど」

「お疲れっ!・・・なんだ、浮かない顔だな」

少し遅れて降り立ったルークとゼストが二人を見てどうしたと問い掛ける。二人は別に何でもと肩をすくめ、竜を宿した。

そのまま四人そろって本部に戻り、総司令室へ向かった。

そこはほとんどデュライの私室・・・もとい仕事部屋になっている。任地に赴いている時以外は大抵ここで仕事をしているはずだ。

「―――失礼します。特殊任務遂行部隊、参上しました」

ノックと共に扉を開き、部屋に入る。と、4人は同時に足をとめた。

「―――あぁ、戻ったか。お疲れ」

資料を片手に顔を上げ、四人に気付くデュライ。その隣りには同じく資料を抱え、口元を抑えるハルトの姿があった。

「副隊長・・・?ぁ、すみません、お取り込み中でしたか。ならば出直します」

「あぁ、いいよ大丈夫」

慌てて部屋を出ようとした4人に、ハルトは少し遅れて顔を上げた。

「大体の話は終わってるから。報告かい」

「はい。今日の一次パトロール、無事に終了しました。異変はありません」

左胸に拳を当て、答えるゼスト。デュライは資料に何か書き足すと、頷いた。

「大して警戒するような報告も無い、か・・・・・やはりただの思い過ごしだろうか?」

「用心するに越したことは無いけどね。けどこの様子じゃ警戒視する必要があるのかどうかも疑問になってくる」

「やっぱなんも変わったことねぇのか?」

腕を組み問い掛けるアルダンに、デュライは頷いた。

「最近は各地で異常現象が起こると聞く。もしかしたらこれもその一環じゃないかという見解もでてきてな。

 ・・・こうも何の異変の無い日常が続くと、やはり騎士間にも疑問が湧いてくるだろう」

図星をつかれ、シン達はこっそり肩をすくめた。

「様子を見つつだが、少しずつ任務の縮小に出ようかと、その話をしていたんだ。お前達もこう毎日任務とパトロールが続いては身が持たないだろう」

「それなりに休養は取らせてもらってますし、自分たちは大丈夫です」

「そう言ってくれるのは心強い。だが他の騎士に比べると、やはり荷は重い。・・・すまんな、我々に分析力が無いせいで4人だけに多くを任せてしまって」

「一番重荷負ってンのは二人だろ。あんま無理すんなよ、特にデュライ。最近寝てねぇことくらい知ってんだぜ」

腰に手を当て、ピシリと指摘するアルダン。デュライの背後でハルトも苦笑を浮かべた。

「・・・レディアス。喋ったか?」

「いーやなんにも。」

チラリと見られ肩をすくめるハルト。アルダンは「そんくらいわかるさ」とあきれた表情で付け加えた。

「けど確かに、君は働きすぎだよ。休む時は休まなきゃ、君の体が心配になる。判断力がにぶっちゃぁマズいんじゃないかい?」

「・・・わかったよ。全員でそんな目で見てくれるな」

頭を掻きつつしぶしぶ呟くデュライ。5人から同時に気遣いの視線を送られ、気まずそうにコーヒーを飲んだ。






結局検討の結果、警備を縮小することになった。

竜人4人のパトロールも多少なりと削られ、彼らは久々に肩の力を抜いた。

その日アルダンは夜警に当たるシンと別れ、部屋に戻ると倒れこむようにベッドに沈んだ。

なんだかんだといっても、やはり無理をしている部分はあった。

正直のところ、負担が減ったことは素直に嬉しかった。

(今日は・・・久々に眠れそう・・・)

もぞもぞと制服を脱ぎ捨て、槍立てに槍を収めもせず、そのままぐっすりと眠り込んでしまった。
















事件は、その日に起きた。









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