「フィアさんって、どんな人だったのですか?」
セビリアが問い掛けた。
サイードはびくっと顔をあげ、痛みをこらえるような、そんな微笑を浮かべた。
「・・・そうですね・・・容姿が、ホントにセビリアさん、あなたにそっくりですよ。それに、なんというか・・・・とても、すごい人でした。」
―――そう・・・僕なんか、足元にも及ばない人だった。
「僕があの時・・・もっと強かったなら・・・・」
「サイードさん・・・」
サイードが、ふらりと立ち上がった。
「もう二度と・・・誰にも、こんな思いはして欲しくないのに・・・」
そのまま彼は戸口のところにまで行くと、こう呟いた。
「―――今日で、全てを終わらせる・・・絶対に・・・」
サイードが出て行ったあと、ラシュトにセビリアがそっと言った。
「ラシュト・・・ティファは、無事ですよね・・・」
「―――ああ。無事に決まってるさ。サイードと一緒にジーナを倒して、ティファを助け出す。それで、終わるさ」
「・・・ええ」
ラシュトの笑顔に、セビリアもにっこりと微笑んだ。
レイは屋根の上にのぼって、星空を見ていた。と、
「レイ・・・」
サウラがのぼってきた。
「落ちるなよ、サウラ」
「そんなわけな・・・きゃっ!」
足を滑らせてサウラは見事にこけた。レイは軽く頭を振って立ち上がり、彼女を立たせてやった。
「あ、ありがとレイ」
「怪我をするなよ。こんなところで」
「・・・うん。隣り、いい?」
「・・・ああ」
しばらく、二人とも無言で星空を見た。
「―――私のことなら、大丈夫だ」
サウラが何か言う前に、レイが言った。
「レイ」
「確かに・・・自分のこと・・・デュナンや、村のこと・・・意識してしまうのは確かだ。だが、私は今、ここにいる。
そしてその意味・・・そして重みを理解しているつもりだ」
「・・・」
「・・・すまないな。話すのは下手だから、上手く言えない。でも、私は大丈夫だ。」
「・・・そう。よかった・・・今日はがんばりましょうね」
そう言って下へ下りていくサウラに、レイが声をかけた。
「サウラ」
「え?何、レイ」
「いや、・・・礼を言いたかった。・・・ありがとう」
そんなレイに、サウラは微笑を返した。
「―――ティファ・・・」
ベッドに腰掛け、リューマは彼女の弓を見ていた。
『ぶー、リューマのいじわる・・』
『あははっリューマ変な顔ー!』
『ありがと、リューマ♪』
「何やってんだオレは・・・」
動けなかった。ティファが連れて行かれるとき、あの剣を跳ね除けて戦うこともできたはずなのに。
あまりにも鮮やかに背後をとられ、体が動かなかった。
リューマは愛用の棍をグッと握り締めた。
「ティファ・・・まってろよ」
でも、後悔しても、それだけでは何も変わらない。悩むだけでは、何も変えることはできない。
「―――ホント、らしくねぇ」
そして、ゆっくりと夜明けが来た。
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