「ほらほら、どうしました?立っているだけでは皆さんそろってあの世行きですよ」
先端が七つに分かれたガルフブレードをもてあそびながら、ジーナはゆっくりと六人を見回した。
「チッ・・・みんな行くぞ!」
おう、とラシュトの掛け声に応えて、リューマが突進する。
「飛蓮!!」
ティファの放った矢が彼らを援護する。
だが、ラシュトとリューマ、それにティファの矢も、ジーナの“結界”とも言うべき魔力の壁を、それに剣の壁を越えることは出来なかった。
「くくくっ・・・スターライトシャワー!」
「バリアー!」
「ファイアウォール!」
ジーナの放った光属性の術を、間一髪、セビリアのバリアーが防ぎ、レイの術が相殺する。
「サウラ、ブライトを召喚しろ」
「えっ!?」
「ブライトの破壊光線でジーナを撃て。生き埋めになるかも知れんが・・・どの道、このままではやられる」
「・・・わかったわ。」
サウラは頷くと両の手で槍を持ち、瞳を閉じた。
≪我が心のうちに宿るもの それ汝の化身なり 森羅万象を司る汝らが真理 暗き静寂の中より出でし・・・≫
サウラの詠唱が聞こえたか、ジーナの表情が僅かに変わり、光線がサウラに集中し始めた。
「・・・させんぞ、ジーナ・・・・・・・・・・ツイスター!」
レイの生じさせた竜巻が、セビリアのバリアーを破ろうとしていたジーナの術を吹き払う!
≪―――・・・我 サウラ=ピックフォードの名において 汝の姿今ここにさししめさん・・・!≫
「ブライト!!」
サウラの声と同時に、光に包まれた聖竜が出現した。
「ブライトっあいつを撃って!!」
ドオオオォオオ・・・・・・ン!!!!
凄まじい破壊力を持った光線が、炸裂する!
「ぐ・・・っ!」
ジーナはとっさに魔導壁を生じさせ、何とかこれを防いだ。
が、誰もが予想しなかった方向から、一振りの剣がその魔導壁を切り裂いてジーナの体を刺し貫いた!
「が・・・っぐぁあああっっ!!」
ジーナの絶叫は、爆音と閃光に飲み込まれた。
閃光が消えた後、ラシュト達の目に映ったのは―――ジーナを貫く刃と、それを握り締めたサイードの姿だった。
「バカな・・・サイード・・・死んだはずでは・・・」
「―――どうしても・・・あなただけは・・・許さない・・・っ」
サイードの剣が一度深く入り、一気に引き抜かれる。一目で、致命傷とわかる一撃だった。
「・・・ふ・・・っですが私は、あなたたちには殺られませんよ・・・私を殺せるのは・・・・・・・私のみ!!」
ジーナはそう叫ぶなり、頭上に落下してきた巨岩の下へ自ら飛び込んだ。
そしてサイードも、その場にゆっくりと崩れ落ちる。
「サイードッ!!」
ラシュトが駆け寄って抱え起こしたが、もう助からないことは誰の目にも明らかだった。
「・・・・みなさん・・・早く・・・早く逃げてください」
「サイード・・・さん・・・」
「大したことも出来ず・・・迷惑をかけました」
リューマがそっと、サイードの肩を叩いた。
「馬鹿言うな・・・誰が迷惑なんざかけられた!?」
「あたしたちのがメーワクかけっぱなしだよー!」
ティファもリューマも、知らず知らずのうちに泣いていた。
「------ふふっ・・・貴方達なら、本当に・・・世界を救えるかも知れませんね。六勇者の末裔・・・新たな勇者としてだけでなく・・・
全ての命を慈しむことのできる・・・・・・・・・・・・・・真の勇者として・・・」
「でも俺たちは、・・・お前を助けられなかった」
ラシュトが呟くと、サイードは微かに笑った。
「もぅ、十二分に助けてもらいましたよ。僕は・・・これで、・・・・・・やっと・・・・」
そう言ったサイードの瞳から、すうっと光が消えていく。
「・・・・・僕は・・・約束を守れたので・・しょうか・・・・・フィアさん・・・・・・・」
サイードの右手が、ゆっくりと地面に落ちる。セビリアがその手をそっと手にとった。
「必ず・・・逢えますよ。サイードさん」
「―――おつかれ、サイード」
レイが静かに黙祷を捧げ、サウラが十字をきる。
サイード=ラサーファは、ラシュト達が見守る中、その息を引き取った。
洞窟がいよいよ本格的に崩れ出すまで、誰もその場を動かなかった。
>>